
月イチ連載企画の「今も輝いて アイドル伝説」。今回は渡辺美奈代(56)が登場です。おニャン子クラブのメンバーとして1985年にデビュー。ソロ歌手でも活躍していたが、96年に結婚。2人の男の子を育て上げた。現在もラブラブの夫や子どもたちに囲まれ、ママ業を優先しながらも、SNSで積極発信。アイドルを両立させている。
都内のスタジオで行われたインタビュー。前の撮影が長引き、待っていると、タレントとしても活躍する長男の矢島愛弥(28)が「お待たせして申し訳ないです」とコーヒーとお菓子を差し出してくれた。ほどなくして始まった取材には、個人事務所「Minayo Office」の代表取締役を務める夫の矢島昌樹氏も同席。夫や愛息がほほ笑ましく見守る、さながら「家族会見」だった。
渡辺は愛知県出身。松田聖子に憧れてはいたが「田舎からアイドルになれるなんて思っていなかった」という中学生だった。習い事感覚でタレント養成所のダンススクールに通うと、すぐに光を放ったのだろう。1、2カ月でおニャン子クラブのオーディションを受けることになったという。
「もう一人、渡辺という女の子がいて、付き添いで行ったんですけど…」あれよあれよという間に合格してしまった。1985年11月、すでに「夕やけニャンニャン」はフジテレビ系で放送が始まっていた。だが「午後5時の放送開始だったので、見たことなかったんです。おニャン子クラブというグループも知らなかった」という。
上京しグループに入ったが、「普通の高校生のままでした」と振り返る。グループは、爆発的な人気を誇ったが、学業優先が“オトナたち”の方針。「学校に行かないと活動に参加できない。留年もダメ。テスト期間はその前の一週間から番組に出なくてもよかった。スタッフの方が家庭教師がわりに勉強を教えてくれたりもしました」
放課後の部活感覚で始まったアイドルライフだった。「仲良かったのはゆうゆ(岩井由紀子さん)かな。私が高1で入ったときに一番上のお姉さんメンバーは大学生。上下関係が厳しいということもなかったですね」。当時はアイドル全盛期だったものの「歌番組で、他の方と交流するというのはあまりなかったですね。むしろ高校の同級生で仲良くなったり。西村知美ちゃんが同じクラスでしたね」。
おニャン子は「ちょっとかわいい学校の友達」という素人感が斬新だった。現在、歌番組などで令和のアイドルと共演する機会もあるが「すごいプロですよね。フォーメーションダンスとか、すごい。私たちといったら…」。ちょっと上を見上げ、苦笑しながら頭をかいた。
コンプライアンスやセキュリティーなどが希薄な時代。悩まされることもあった。「家には毎日、カメラ小僧と呼ばれるファンの方が来てました。当時はオートロックがなかったので、玄関の前にも。もっと困ったのは実家にまでファンが来たこと。両親はびっくりしてました。でもあの頃は、みんなそんな感じでしたよね」
日本中の中高生たちを熱狂で包んだおニャン子は87年9月、番組終了ととともに解散。ソロとしての活動が本格化した。
フジテレビ系「志村けんのだいじょうぶだぁ」など、志村けんさんのコント番組に多く起用された。「志村さんは本当にすてきな方でした。笑わせる技術なんてない私に、『何もしなくていいんだよ。そのままいてくれたらいい』とおっしゃってくれました」
愛くるしい魅力で、バラエティー番組は引っ張りだこ。歌の仕事もあったが「グループ時代からソロデビューもしていたので、レールに乗っている感じでした。当時の目標?う~ん。これといって特になかったですね」。
レールに従って走った芸能人生、大きな転機は96年に訪れた。音楽活動をしながら郷ひろみの付き人でもあった矢島氏との結婚だった。「家庭と芸能活動の両立は無理と思っていたので、引退しようと思っていました。独身時代からおうちが好きだったし」と専業主婦の道を決断。夫に打ち明けた。
しかし矢島氏からは「辞める必要ある?」と返事が。矢島氏の実家は事業をしており、両親は共働きだった。「ボクは専業主婦を望んで結婚するわけじゃないよ。外に出ている方が輝いているはず」。夫からの後押しもあり、晴れて芸能活動は継続となった。
結婚生活は今年で30年になる。「あくまで家庭が優先。居心地のいい家をつくるのが大事。芸能活動は、求められれば、できる範囲でやります」。そんなスタンスで育児に励みつつ、毎年のバースデーライブを開催。近年はYouTubeなどSNSでも女性からの熱烈な支持を集めている。
アイドルで妻でママ。3つの顔に加えて、実業家の一面も持つ。セレクトショップをオンラインと店舗で運営。家事が高じて、近年では整理収納アドバイザーの資格も習得した。「根がマジメ。やりすぎなくらい突き詰めちゃう」と矢島氏は感心する。
取材されている母を見つめていた愛弥に聞いてみた。「反抗期はなかったの?」。すると「ありましたよ。だけど、友達の家に泊まりに行くのも認めてくれたり、自由にさせてくれた。それでも、何より、家が居心地がいいんですよね。両親の仲がいい?確かに、友達に『理想の家庭だな』って言われたことあります」と母譲りのはにかんだ笑顔をのぞかせた。
矢島氏は渡辺が席を離れた隙に、以前に愛弥が取材された際のやりとりを明かしてくれた。「『クソババァって思うことないの?』って聞かれて『えっ?だって我が家にはクソババァなんていないですから』って」。
愛弥がうなずく。そこへ美奈代ママが戻ってきた。「ん?何の話?褒めてくれてた?」。父子はいたずらっぽく顔を見合わせていた。
◇渡辺美奈代(わたなべ・みなよ) 1969年9月28日、愛知県生まれの56歳。85年「夕やけニャンニャン」のおニャン子クラブオーディションコーナー「アイドルを探せ!」で合格。グループ入り。会員番号は29番。86年、シングル「瞳に約束」でソロデビュー。87年におニャン子解散。96年、テレビ朝日「新婚さんいらっしゃい!」で女性司会に就任した。同年に結婚。長男の矢島愛弥、次男の矢島名月も芸能界で活躍。